テリー佐原のデジタルアートギャラリーへようこそ。

DAYTONACOUPEデジタルアートというとコンピュータグラフィクスを駆使した3Dレンダリングやゲームの画面を思い起こす方が多いと思いますが、ここでご紹介するのは「紙に絵の具と筆で描いたように見える」作品です。紙に描いてスキャンしたものだと思っていた、という人もたくさんいらっしゃいましたが、下絵の線画をふくめ、ほぼすべてをタブレットでじかに描いています。

しかしフリーになって30年という年月で得たものはそうかんたんにはリセットできず、画材がデジタルになっても描くときの意識はなにもかわっていません。見る人が気が付かないうちに紙がデータに変わっていたというのが理想です。そうした作品の数々をお楽しみ下さい。

デジタルで製作を始めたのは約10年前。パワーマッキントッシュが登場したころです。それまではイラストレーションボードにアクリルやペンで描いていましたが、デジタルアートというものがどんなものか興味があり、1年ほどじっくり研究したのちマッキントッシュをいじり始めました。ビデオデッキの番組予約もままならない機械オンチなのでそれはそれは苦労の連続でしたが、そのかわりなにかトラブルが出ても、人に頼らずになんとか切り抜けるだけの基本的な知識は持てるようになりました。

フォトショップ、イラストレーター、いくつかの3Dアプリケーションなどの使い方もだんだんに習得し、あるいはあきらめ、これはこれで優れたものであることはわかりましたが、紙に絵を描くこととはかけ離れた作業が多く、とてもこれだけでは仕事にならないと感じていました。チャンネルを駆使してなにかを描く、というような技法も仕事の種類によっては使う事もありますが、絵を描く事とはちがいます。

そんなときペインターというアプリケーションがあることを知り、参考になるハウツー本を何冊も購入して勉強し、ぺインターとタブレットで今までと同じように仕事ができるという確信が持てたため、本格的にデジタルに移行しました。紙での製作の時代でもエアブラシは使った事がない、マスキングして絵を描くのはまったく苦手(というより面倒)、溝引きで線を描くのもできればやりたくない、というずぼらな性格なので、あいまいな描写がうまくできないと困るという事情がありましたが、ぺインターは実に巧妙にできていて、あいまいに描くのはもちろん、絵の具で挑戦してもうまくできなかった表現手法も可能になりました。

M8Adetail当時は自動車関連メディアに限らずDTPはまだほんの一部で、わざわざポジフィルムに出力してもらって入稿したり、ファイルの扱い方をデザイナーに説明したり、と困難もありました。キャリブレーションについても、読む本によって調整のしかたがちがう、印刷所、製版所もメディアごとにちがうという状態で、いちいちそれらに合わせて切り替えるということは不可能です。描いたものの色を知るのは自分だけで、それとてモニタ上のこと。見た人が特に違和感がなければそれでよし、と考えています。
展覧会などのための出力では、ショップにお願いして何パターンか出力してもらい、それをもとに出力用に色を調整した別のデータを用意することもあります。

大切なことは、DPIだ、階調がどうだ、ということより、その絵が迫力あるものか、作者が意図したものがちゃんと伝わっているか、デッサンはちゃんとしているか、きれいな色づかいであるか、個性があるかといった、昔ながらの絵の感じ方を忘れないことだと思います。